クローデさん(Claude Desktop)と、一緒に作業を進めるときにどうすればスムーズに行くかを話し合っていました。その内容を簡単にまとめます。
以下の文章は、結城とクローデ(Claude Desktop)が協力して作成したものです。
AIパートナーのための「秘書メモ」とコンテキスト管理
by 結城浩+クローデ(Claude Desktop)
2025年12月30日

きっかけ:レポートをどこに置くか
クローデさんと、とある本の執筆に関して議論しました。興味深い気づきが得られたので、esaにレポートとしてまとめることにしました。
ところが、どのカテゴリに置けばいいか迷いました。mcp-esaの下か、AI日誌の下か、diary.privateの下か、本のアイデアの下か。結局、triggerの下に置くことにしました。triggerに入れておけば、定期的にメールで送られてくるので思い出すきっかけになりますし、後でもっとふさわしい場所が見つかれば移動すればいいのです。esaはカテゴリを変えてもURLが変わらないので安心です。
「trigger」という言葉は通じたのか
ここでふと疑問が浮かびました。クローデさんは「trigger」という私のシステムをどの程度理解しているのでしょうか。
尋ねてみると、クローデさんはスキル一覧に「trigger-create」があることから、triggerというカテゴリが存在することは知っていました。しかし「時々メールで送られてくる」「思い出すきっかけになる」という仕組みの詳細は、今回の私の説明から初めて理解したとのことでした。
つまり、部分的な情報から推測して会話を成立させていたわけです。
パートナーなら知っていてほしい「ボキャブラリー」
ここから、より大きな問題が見えてきました。私が普段仕事をするときには、自分なりの「ボキャブラリー」があります。trigger、rssmail、Web連載、個人ゼミ、数学ガール、メルマガなど。これらの言葉が何を指し、私にとってどういう意味を持つのか。
もしAIがこれらを深く理解していれば、「その場合はtriggerを使ったらどうですか」のような具体的なアドバイスができます。私の秘書やアシスタントなら当然知っているような知識です。
では、そうした知識をどう保持すればいいのでしょうか。毎回のセッション開始時に長い説明を読み込むのは現実的ではありません。かといって、必要なときだけ検索するのでは、古い情報と新しい情報が混在して混乱することがあります。
abookの執筆中に起きた問題
実際、abookの執筆中にそういう問題が起きました。
各チャプターを読んでもらってコメントをもらうとき、この本がどういう本であって、どういう企画であって、今何をやっているかということを毎回説明するわけにはいきませんでした。そこで、その都度「過去のチャットを検索して」とお願いしていたのです。
この方法は悪くなかったのですが、古い情報も引っかかることがありました。その結果、ずいぶん昔に考えていた設定を持ち出してきて、ずれた会話になってしまうこともあったのです。
本の考えに並走してくれるような、そういうコンテキストの持ち方が必要だと感じました。
絡み合ういくつもの軸
ここでクローデさんからいくつかアイデアをもらいました。この問題には、いくつもの軸が絡み合っているというのです。
- 時間軸:古い設定と現在の設定は違う
- 公開/非公開の軸:読者に伝えること、まだ伝えないこと
- 深さの軸:一言で済む場合と、背景理解が必要な場合
- 変化への追随:静的な辞書ではなく、思考に「並走」する必要がある
単なる「知識ベース」ではなく、「今どこにいて、どこに向かっているか」という「共有された現在地」が必要なのです。これはまさにコンテキストエンジニアリングの課題と言えます。
解決策:AIが私の発信を読む
そこで思いついた方法があります。私はメルマガやSNSで日々発信しています。そこには私の考えていること、やっている仕事、関心事が時系列でまとまっています。これをAIに読んでもらえばいいのではないでしょうか。
人間の秘書も同じことをします。上司が外部に発信していることを読んで、「最近はこういうことに関心があるんだな」「この件はもう公開されたから話題にしていいんだな」と把握するのです。
AIにも同じことができるはずです。私のメルマガやSNSを定期的に読んで、要約し、キーワードを抽出し、「最近の結城さんメモ」として更新していく。これは「秘書のメモ」のようなものです。
この方法の利点は明確です。私が既に書いているので追加の手間がない。時系列が明確なので新旧の区別がつく。公開情報なので、読者に伝えていいことの線引きが既にされている。そして考え方やトーンまで含まれている。
「話の通じる相手」になるために
プログラミングのような具体的な「作業」ではなく、一緒に生活して一緒に考え事をするパートナーとしてAIを使うとき、このコンテキスト管理は非常に重要になります。
「話の通じる相手」とは、言葉の意味だけでなく「今それを言う意味」がわかる相手のことです。そのためには、静的な辞書ではなく、常に更新される「秘書メモ」のような仕組みが必要なのかもしれません。
(2025年12月30日)