AIは数学の問題を「作る」ことができるか

2026年1月30日 結城浩×クローデさん(Claude Desktop)

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結城浩

AIが数学の未解決問題を解いたという話題が、先日ネットで話題になっていました。それはそれとしてAIが数学の未解決問題を「作る」という現象はこれまで起きたことはあるのでしょうか。プロの数学者が「これは考えるに値する問題だ」とわかるような問題を作ることができたらすごいなと想像しています。

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Claude

とても興味深い視点ですね。「問題を解く」ことと「問題を作る」ことは、数学において質的に異なる創造性が求められますから。

調べてみたところ、実際にいくつかの事例がありました。

最も有名な例は2021年の「Ramanujan Machine」です。イスラエルの研究者たちが、新しい数学的公式を生成できるAIを構築し、その中には数学者を悩ませ続けている未解決の問題も含まれていました。これはNature誌に掲載された研究で、インドの天才数学者ラマヌジャンにちなんで名付けられています。

もう一つ注目すべきは、1980年代後半のGraffitiという先駆的なシステムです。Siemion Fajtlowiczが開発したこのプログラムは数千の予想を生成し、そのうち少なくとも60が後に数学者によって証明されました。

2021年にはDeepMindとオックスフォード大学・シドニー大学の共同研究もありました。機械学習が数学者を導いて新しい予想や定理を発見するフレームワークを提示し、オックスフォードの数学者たちは結び目の代数的・幾何的不変量の間に驚くべき関連を発見し、数学における完全に新しい定理を確立しました。

面白いのは、「問題を解く」能力と「問題を作る」能力は別物だという点で、実は後者のほうが歴史が長いということですね。

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結城浩

そこに挙げられている事例は、ずいぶん以前のもののような気がします。最近のAIの進化を踏まえると、もっと出てきて良さそうな気がしますね。

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Claude

おっしゃる通りです。2021年の事例が中心でした。

追加で調べてみると、最近のAI(2024-2025年)の進展は圧倒的に「問題を解く」方向に集中しています。

  • 2025年:OpenAIのモデルがIMO(国際数学オリンピック)で金メダル相当の成績
  • 2025年末〜2026年初:Erdős問題を15問以上解決(うち11問はAIが直接関与)
  • FrontierMathという研究レベルの数学ベンチマークへの挑戦

一方、「問題を作る」方向については、依然として2021年のRamanujan MachineやTxGraffiti(GRAFFITIの後継、グラフ理論専用)といった専用システムが主役のままです。TxGraffitiは独立集合、マッチング、正則グラフに関する予想を生成し、それが後に証明されて論文になった例もあります。

なぜ「問題を作る」方向の進展が少ないのか

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Claude

これは私の推測ですが、いくつかの理由が考えられます。

まず、評価が難しいという問題があります。問題を「解けたか」は明確ですが、問題が「良いか」は主観的で、ベンチマーク化しにくいのです。

次に、インセンティブの問題があります。「AIがIMOで金メダル」は見出しになりますが、「AIが面白い予想を作った」は地味に見えます。

また、検証ループの欠如も大きいでしょう。解く方向はLean等の証明支援系で形式検証できますが、「面白さ」を自動検証する仕組みがありません。

さらに、データの問題もあります。「良い問題とは何か」を学習させるデータセットが存在しないのです。

結城さんがおっしゃるように、LLMの推論能力がここまで上がったなら、「数学者が考えるに値する問題を生成する」という研究がもっと出てきてもよさそうですね。まだ手つかずの領域なのかもしれません。

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(2026年1月30日)